【民泊新法施行当日】Airbnb違法民泊物件非表示後の実態調査 #2
さて、住宅宿泊事業法(民泊新法)が本日から施行になりました。
こちらの記事はAirbnbにおける違法民泊全物件非表示の実態調査 #1に続いて、第2弾です。
現在のAirbnbの状況はどのようになっているのか、一緒に見てみましょう。
※この調査事態はAirbnbに絞って行っておりますが、こちらの結果は、どの民泊仲介サイトにも当てはまる可能性があります。また、今回は住宅宿泊事業法が悪法か否かの論点は控えてお話をします。予めご了承ください。
Airbnbを民泊ポリスのデータベースと行政の届出状況と比較
今回の調査で利用するものは以下の3つです。
・Airbnbの掲載情報(リスティング)
・民泊ポリスが過去あぶり出した、所在地(住所)と紐付いたAirbnbのURLリスト
・保健所が公開している旅館業法の許認可施設一覧と民泊新法の届出済み一覧
上記の3つについての補足説明
Airbnbの掲載情報(リスティング)について
本日から施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)によって、仲介業者として登録しているWebサイトには無許可・無届けである違法宿泊施設が掲載されていてはいけません。その対応として、Airbnbは住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に向けて、運営者(事業者)に対して「届出番号」の登録を義務付けてきました。これにより2018年6月15日からは、この「届出番号」を登録していない物件は全て非表示となるよう設定しているようです。つまり、この処置によって理論上は違法な宿泊施設がAirbnb上に掲載されないということです。
しかし、この処置には注意が必要です。どういうことかというと、Airbnbは「運営者(事業者)が登録した届出番号が正確か否かの確認はしない」と言っているからからです。
参照:Airbnb、法的根拠の登録義務化へ(内容正否は確認せず)
要するに、虚偽の届出番号を運営者(事業者)が登録すれば、Airbnbを騙して掲載を続けることができるということです。番号の正否確認までは、Airbnbは責任を負うことはないということでしょう。これについては、住宅宿泊事業法(民泊新法)の仲介業者は毎年4月と10月に、半年分の掲載物件の情報を観光庁に報告する義務があるため、関係者一同が適切に対応することができれば問題はないかもしれません。抜け道も存在しますが、それは機会があれば別の記事に致します。
民泊ポリスのデータベースについて
民泊ポリスは3万件近くの所在地(住所・建物名)と紐付いた民泊URLを保有しています。この3万件というのは、1つの仲介サイトだけでなく、無数の民泊仲介サイトで補足してきたものの合計の数字です。その民泊URLの多くが、今回の住宅宿泊事業法(民泊新法)によってアクセスができない状態となりました。しかし、実際にまだアクセスできる民泊URLも残されています。それらは、旅館業法や民泊特区で許認可を取得したのか、または住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出がされているのか検証をします。
保健所が公開する許可済み・届出済みの施設一覧について
こちらは文字通りで、その行政が宿泊施設として許可を出している施設、民泊として届出を受理している施設の一覧です。多くの行政がすでに情報を公開していますが、今回は東京都の渋谷区保健所が公開しているようなので利用させていただきましょう。他意がある訳でなく通り魔的な選び方ですが、保健所の皆様におかれましては、参考にしていただけますと幸いです。
民泊ポリスのデータから、いくつかピックアップ
まず、民泊ポリスが補足しているAirbnbの民泊URLの中で、以下の3つの条件に全て合致するものをいくつか選択してみます。
・渋谷区内に存在するもの
・依然としてアクセスできるもの
・民泊ポリスが「許認可・届出が疑わしい」と感じるもの(属人的で申し訳ございません)
ということで、いくつか民泊URLをピックアップしました。しかし、ピックアップしたURLを全て公開することはできないため、今回は1つだけ公開します。なぜ1つだけでも公開するのかというと、私共が嘘を申し上げていないことの証明とするためです。また、言いがかりを防ぐため、この記事の公開時点でアクセスできた証拠としてログや画像を、民泊ポリス内部に残しておくことにします。
https://www.airbnb.jp/rooms/20095652
2018年6月15日現在、上のURLにアクセスしてみるとアクセスできます。
免許番号/登録番号を確認
そしてWebサイト上では「免許番号/登録番号」という項目に届出番号の表示が開始されていますので、そちらも確認します。許認可・届出を取得している物件に関しては「許認可・届出番号を取得している」ということが記載されています。例えば、民泊として届出番号を取得している場合、東京都内では「M13」から始まる番号が割り振られます。ですので、Webサイトには「住宅宿泊事業法(民泊) 届出番号M13××××××××」といった具合です。しかし、この物件の「免許番号/登録番号」には疑問が残る文言が並べられております。
引用開始
その他の正当な法的根拠 | こちらの物件は現在住宅宿泊時事業者の申請中です。 5月8日:事業届け出申請(受付番号J04798) 5月20日:登記事項証明書取得 5月30日:オーナー許可の転貸可能契約書、及び覚書取得 6月2日:管理会社及びオーナーの図面不所持の為、図面作成 図面完成消防局提出、消防設備設置、法令適合通知書受け取り予定
※出典:https://www.airbnb.jp/rooms/20095652
引用終了
現在、届出の申請中なので許してくださいということですね。しかし、残念ながらこちらのマンションでは民泊の届出を行うことができません。それは、こちらのマンションでは管理規約ですでに民泊を禁止しているからです。http://info.minpaku-police.com/info/23/で申し上げている通り、マンションで民泊を行う際には、そのマンションで民泊を禁止していない、あるいは禁止する方針がないことの証明が必要となります。推測ですが、すでにこの民泊は渋谷区保健所からも否認されているのではないでしょうか。これがまかり通るのであれば、一度、形式上の届出申請を出せば、否決されても掲載し続けることもできてしまいます。
実は、上に引用した文言は本日1日の中で変更されています。最初は「この運営者(事業者)は会社であり、その会社は不動産の仲介、斡旋、賃貸、販売事業及びゲストハウスの事業一切が可能なように事業目的が登録がしてある」から問題ないのだという内容が書いてありました。会社の事業目的で上記の内容が行えるようにしてあることと、旅館業法での許認可を得ていること・住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出申請が通って受理されていることは関係ありません。管轄の行政から許認可を得るか届出を受理されない限り、宿泊施設を運営することは許されません。
法の解説になると長くなるので今回は控えますが、マンスリーでの賃貸借契約の形態を取っていれば、まだ議論の余地は多少残されます。しかし、https://www.airbnb.jp/rooms/20095652の最低予約可能泊数は2泊からです。この民泊は非常に怪しいです。
この民泊の住所
一度、流れを戻して話しを進めていきます。民泊ポリスは、この民泊の所在(住所)を把握していますが、念のため一部を伏せて公開致します。
上記URLの民泊住所:「東京都渋谷区代々木2丁目○○番○号」にある物件の一室
ここは一時期、民泊の巣窟となってしまい、一部の方には有名な物件です。この物件についてインターネットで情報を収集すると、管理規約でも民泊を禁止にしており、日々違法民泊と戦っている様子を見ることができます。
ここで、「本当に民泊ポリスが紐付けているURLと所在(住所)が正しいのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。「信じるか信じないかは、あなた次第です!」という都市伝説のような言い方をしますが、ここで1つ参考情報としてお伝え致します。過去に民泊ポリスが有料で調査を請け負い、証拠として出した民泊URLに「一度も」間違いはありませんでした。当然、100%正しいという保証はできませんので、このURLと所在(住所)の紐付けに関する信ぴょう生については、ご自身でご判断ください。
なお、民泊ポリスの調査方法の詳細は基本的に社外秘密ですが、一部をマニュアル化して一般の方にも利用できるようにしております。
渋谷区保健所の一覧を確認
少し話がずれましたが、今度はその所在(住所)が渋谷区保健所の公開している旅館業法の許認可施設一覧と民泊新法の届出済み一覧に存在しているかを確認していきます。
上記でリンクをしているページの中に、住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出を出している施設一覧と、旅館業法での許可施設一覧があります。
2018年6月15日13時現在では、
・住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出を出している施設一覧=2018年6月5日までのもの
・旅館業法での許可施設一覧=2018年5月15日までのもの
が公開されていました。
一覧に存在しない
まず、住宅宿泊事業法(民泊新法)で届出一覧には「東京都渋谷区代々木2丁目○○番○号」の物件はありませんでした。また、旅館業法での許可施設一覧には「渋谷区代々木2丁目」に該当する物件が4件ありました。しかし、どれも2丁目以降の住所は異なりました。そもそも、該当する4件の宿泊施設の室内の様子と、https://www.airbnb.jp/rooms/20095652の室内の様子は、明らかに違います。
保健所へ電話で照会してみる
施行日当日ということでご多忙の中、恐縮ながら架電。照会結果としては、この物件での許認可・届出はないということでした。管理規約で禁止しているのですから、当然です
調査結果
実は、他の物件を調査する中で、「免許番号/登録番号」に虚偽の登録番号を用いて登録している物件も見つかっています。その他、おかしな理論を用いて、旅館業法にも住宅宿泊事業法(民泊新法)にも該当しない形態で運営しているから問題ない、と書かれたものもありました。これらは新宿区にある物件でした。当然、所在地(住所)も民泊ポリスでは把握しており、保健所にも許認可・届出がないことは確認がとれています。
本日の調査で判明したことは、住宅宿泊事業法が施行された現在も、無許可・無届けの宿泊施設がAirbnbに掲載され続けている可能性が非常に高いということです。その要因としては、以下のが考えられます。
①Airbnb側が運営者(事業者)用に、何らかの形で運営者(事業者)の自己責任の上で無許可・無届けでも掲載を続けることができるようにしているため
②運営者(事業者)が虚偽の申請内容を登録しているため
①に関して肩を持つのであれば、届出の意思がある民泊(適切に運営される兆しがある民泊)は、できる限り残しておきたいという気持ちは分かります。しかし、それを悪用されているのも事実です。あくまで、運営者(事業者)の自己責任での掲載になるため、仲介サイトから関係ないと言われれば仕方ないことかもしれません。あとは、これらを地味に指導していく行政、管理会社、管理組合の皆様にかかっているということでしょうか。
まとめ
冒頭でも触れた通り、今回はAirbnbに対して実態を調査してきました。しかし、違法民泊(違法宿泊施設)はAirbnbだけに存在するものではないと私共は考えます。他の大手民泊仲介サイトも同様の事態が発生している可能性が大いにあります。また、そもそも住宅宿泊事業法(民泊新法)における仲介業者として登録していない海外の会社・仲介サイトも無数に存在します。違法民泊との戦いは、2018年6月15日をもって終わりではなく、本日から始まったのです。是非、この記事をお読みになった皆様には、そのことをご理解いただきたく存じます。
本日の民泊俳句
畔りにて 蛍揺らめく 夢辿る